先日、わが家の長女(11歳)が「次はスバルのクルマに乗りたい」と言い出しました。彼女はスバル車の「ある部分」をとても気に入っているからだそうです。普段あまり気にも留めていなかったそれは、自動車メーカーの思いを表現する重要なパーツでもありました。
他のメーカーとは明らかに違う「あのマーク」
「次はダイヤモンドがキラキラしているマークのクルマに乗りたい」
ある日、小学6年生の長女と一緒にクルマに乗っているときに、突然そんなことを言い出しました。ダイヤモンドがキラキラ〜? そんなエンブレムのクルマなんてあったかな? と疑問に思い、「じゃ、次にそのクルマを見かけたら教えてくれる?」と長女に頼みました。すると、彼女が「これこれ!」と指をさすのは、前を走るスバル車でした。
スバル車のエンブレムは6つの星がモチーフになっているので「あれはダイヤモンドじゃなくて星なんだよ(笑)」と教えたところ「他のクルマはTとかHとかアルファベットの形なのに、なんでスバルだけはお星様のマークなの?」という、長年クルマの仕事をしていても回答にうっ……と詰まってしまうような質問が飛んできました。
たしかに、他のメーカー車のエンブレムは、TOYOTAならT、HONDAならH、MAZDAならM、というように、メーカー名の頭文字をモチーフにしていることが多く、KIAやNISSANはメーカー名そのものがエンブレムに組み込まれています。明らかに他のメーカーとは違う雰囲気を醸し出しているのが、文字がモチーフではないスバルの「SIX STARS(六連星)」で、小学生女子の目は「他とは違うオーラ」を感じ取ったのかもしれません。
エンブレムには自動車メーカー各社が込めた思いがある
TOYOTAのエンブレムは2つの楕円でTの字を描き「お客様とトヨタの心」を表しているそうです。HONDAのエンブレムは頭文字のHと、創業者の本田宗一郎が嗜んだ「三味線」がモチーフと言われています。MAZDAも、頭文字のMと、未来に羽ばたく翼の姿をイメージしていて、どれも各社が思い描く企業理念を一つの形にし、エンブレムとして採用しています。
スバルのエンブレムは、会社の母体となった「中島飛行機」を含めた5社が合併し、新たな一つの会社である「富士重工業」(現在はSUBARU)をスタートさせたときに「六連星(プレアデス星団)」をモチーフにしたという誕生エピソードがあります。
スバルのエンブレムをよく見ると、一つの輝く大きな星の横に、寄り添うように小さく光る五つの星があります。「五つの会社の人たちがこうやって大きな星のような一つの会社になって支え合おう、という気持ちをエンブレムにしたのではないかな」と娘に説明したところ、それがとても興味深かったらしく「やっぱり、次はこの星のマークのクルマがいい!」という結論に至りました。
自動車メーカーの思いを一つのマークにぎゅっと詰め込んだのがクルマのエンブレムでもあります。「なぜその形なのか?」を知れば、新たにメーカーの魅力を再発見できるかもしれません。