「好きな掃除」が見つかるといいね
「今日さー、聞いて。掃除当番が理科室だったんだけどね……」
ランドセルをぐしゃっとリビングの床に落として、伏し目がちの次女が(我が家の三姉妹の真ん中の娘です)堰を切ったように学校でのトラブルを話し出しました。
ふん、ふんと聞きながら、私の頭の中には、懐かしい小学校時代の理科室の様子が浮かんでは、消え……。
「ねえねえ理科室掃除っていえばさあ、あの水道の、四角いシンクの、排水口の中のヌルヌル綺麗にするのってすっごい楽しくなあ〜い?」
なんて明後日な合いの手を入れてしまったので話を聞いていないのがばれてしまいました。
そう。私、「排水口」みたいな汚れの巣窟的ポイントが昔から大好き。「排水溝」のほうも大好物。中学時代に浚わされた、給食室の外のドブのヘドロがすっかり綺麗になった時には、秋の青空を仰いで「人生って素晴らしい!!!」とすら思いました。
「排水口のヌルヌルなんて誰も触りたくないよ?」と呆れ顔の娘につっこまれますが、だからこそ心置きなく取り組めたわけで、理科の先生にも感謝されたし、言うことなし。
でも家庭の排水口をいくら掃除しても残念ながら誰にも感謝されません。でもここを掃除するのは私の中では「娯楽」なので、まあどこ吹く風だったりします。
「この掃除は好き」
悲しいかな。各種調査の結果、いつも料理や洗濯など含めた「家事」分野の中で一番、主婦たちから嫌われ(疎まれ)ている作業、すなわち「掃除」。
料理は、がんばれば美味しい思いができる。洗濯も、おしゃれにつながる。でも掃除は、がんばったって、ただ、もとにもどるだけ。むなしい。やっても「イヤイヤ」。むべなるかな……。
でも、実のところは、やっていて「ここの掃除は好きだなあ」と、「気持ちいいなあ」と、感じている場所や作業。ひとつくらい、あったりしませんか?
すなおになって! ハートに訊いてみて!
「うーん、私、じつのところ、掃除機の紙パックをひっこぬく時は、いつも、うほほ、と思っちゃう……」
なんていうマニアックな声が聞こえてきたら、しめたものです。
「好き」な作業のなかには、別の作業にも通じるエッセンスがあるはず。芋ずる式に「実は、排水口の網の上のゴミをかっさらうのも好き……」「実は掃き掃除も好き……」と、あらためて「好き」を自覚していくと、あら不思議。「掃除」の徒労感や苦痛感が少し溶けていくものなのですよ。
そして、この「好き」の自覚。ホントは、私たちだけで独占してしまわなくても、いいこと。家族や、子どもたちが、うっかり「一心不乱」になってしまうような「掃除」の体験を、なるべく、うばわないようにしたいもの。
今。あたかも苦行のように押し付ける「やってよー」ではない、おうちの「掃除」シェアや促しかたを、いちど思案してみる時なのかもしれません。