「ズボラ」は被害者にならないための知恵⑦
実は……
あなたの「敵」は……
あなたには荷の重い、重い期待をかけてくるのは……
家族だけではないかも知れません。
「はー、やれやれ」
そうだよね、今日は、すごく、疲れている。 睡眠、足りてない。
体調、あまりよくない。
こんなときにまで、無理をして、
苦手な料理を、時間かけてやらなくても、
お惣菜でも、冷凍食品でも、レトルトでも、
使ってしのげば良いじゃない?
そうすれば、むだにイラつかずにすむ。
家族にも、当たり散らさずに、すむ。
そんなふうに、折り合いをつけたのに、
折り合いをつけることを、がんばったのに。
あたまの中で、声がする。
「一昨日菜っ葉買ったでしょ、今日使わないと萎れちゃうんじゃない?」
「またそうやって、食材をむだにするんだから」
「いつもそう」
「いつもそう」
「だらしない」
「あなたはいつもそう」
「だらしない」
「ちゃんとしなさい!」
ああ、これは「脳内お母さん」……!
そこに加勢する、「脳内世間様」……!
「レトルトなんかじゃ、せっかくの、食べ物のビタミンがしぬよ」
「今どきの母親はこれだから」
「ズボラで、いやだね」
誰が言っているわけでもないのに。
自分の脳内で、
鳴り響く、
自分を罵倒する、言葉たち……
「今日だけ? じゃないでしょ!」
「いつもそう」
「いつもそう」
「あなたは、だらしない」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
誰に向かって、謝っているのか。
「だってあなた、以前◎◎さんが、
うちの夕飯はいつもお惣菜よって言ったとき、
心の中で、責めたこと、あったよね?」
「わたしなら、そんなことしない、って、糾弾したことあったよね?」
「心のなかでとはいえ、バカにして、責めたことあったよね?」
「ズボラで、いやだね」
自分の脳内で、
鳴り響く、
かつて他人を罵倒した、言葉たち……
「わたしなら、疲れていたって、手作りのご飯を作るのに」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
脳内お母さんも、脳内世間様も、
あなた。
あなたには荷の重い、重い期待をかけてくるのも……
あなた自身……なのかも知れません。