家事で荒れた手のひび割れやあかぎれには、「モイストヒーリング(湿潤療法)」という治療法が注目されています。傷口を消毒せず、水で洗い流した後に出る「浸出液/滲出液(しんしゅつえき)」という体液をそのまま保持することで、痛みを抑えながら早く治す方法です。
このコラムでは、サニクリーンのおそうじマイスターが、ひび割れ・あかぎれの原因から、モイストヒーリングの仕組み、家事中でも使えるばんそうこうの選び方までご紹介します。
このコラムでお伝えするポイント
- 冬は皮脂・角質層の水分が失われてひび割れ・あかぎれが起きやすい。
- モイストヒーリングは「消毒しない・乾かさない・水で洗い流す」が3原則。
- 浸出液を保持することで、痛みをやわらげながら傷を早くきれいに治す。
- 「ハイドロコロイド素材」のばんそうこうは防水性があり、水仕事でもはがれにくい。
なぜ冬は手が荒れやすいのか?ひび割れ・あかぎれの原因

冬になると、食器洗いやお掃除などの水仕事でお湯を使う機会が増えます。さらに、風邪・インフルエンザ・ノロウイルスの予防のために手洗いの回数も増え、いつもより丁寧に洗うようになります。
こうして手が水やお湯にさらされる機会が増える一方、冬の空気は乾燥しているため、皮脂や角質層の水分が失われやすくなります。皮脂や水分が不足すると「皮膚バリア機能」が低下し、皮膚表面に亀裂が生じて、ひび割れやあかぎれが起きやすくなるのです。
<ひび割れ・あかぎれが起きる主な要因>
| 要因 | 具体的な内容 |
| 水仕事・手洗いの増加 | 皮脂・水分が繰り返し洗い流される |
| 空気の乾燥 | 角質層の水分が蒸発しやすくなる |
| 冷水・お湯の使用 | 皮膚の血行不良・皮脂の喪失を促進する |
| アルコール消毒の頻用 | 皮脂膜を奪う |
モイストヒーリング(湿潤療法)とは何か?

モイストヒーリングとは、傷口を乾かさず湿った状態に保つことで、体本来の自然治癒力を最大限に引き出す治療法です。
傷口の消毒は行わず、水道水で洗い流したあとに傷口から出る「浸出液/滲出液(しんしゅつえき)」をそのまま保持し治すのが特徴です。
「消毒しない・乾かさない・水で洗い流す」が3原則
従来の傷の治し方は、消毒液を塗ってガーゼで覆い、乾燥させてかさぶたをつくるというものでした。しかし、モイストヒーリング(湿潤療法)では、この考え方を根本から見直しています。
モイストヒーリングの3つのメリット
日本衛生材料工業連合会などの情報をもとに整理すると、モイストヒーリングには以下の3つのメリットがあります。
(1)傷が早く治る
浸出液には皮膚の再生を助ける成分が含まれています。モイストヒーリングではこの浸出液を傷口に保持するため、かさぶたの形成を待たずに皮膚の再生が進みます。
(2)痛みが少ない
傷口が乾燥すると、露出した神経が刺激されて痛みが強くなります。モイストヒーリングでは傷口を湿った状態に保つため、乾燥による刺激が抑えられます。また、モイストヒーリング対応のばんそうこうに使われるハイドロコロイド素材(浸出液を吸収してゲル状になる特殊な素材)は傷口にくっつきにくいので、貼り替え時の痛みも少なくてすみます。
(3)傷跡が残りにくい
かさぶたができると、はがれる際に皮膚組織が傷つき、跡が残りやすくなります。モイストヒーリング対応のばんそうこうで傷口を密封することで、かさぶたをつくらずに皮膚組織の形成が進み、傷跡が残りにくくなります。
モイストヒーリングの基本的な手順
(1)傷口をきれいな水道水で十分に洗い流す(消毒液は使用しない)。
(2)モイストヒーリング対応の被覆材(ハイドロコロイド素材のばんそうこうなど)で傷口を覆う。
(3)浸出液が外に漏れないようにしっかり密封する。
(4)傷の経過を観察しながら、被覆材(ばんそうこうなど)を適宜交換する。浸出液が漏れてきた場合や、はがれて密着しなくなった場合は、その都度交換しましょう。
また、モイストヒーリング対応のばんそうこうは、製品によって推奨される交換頻度が異なるため、必ず取扱説明書を確認してください。
一般的には2〜3日に1回程度の交換が目安とされる製品も多くありますが、傷の状態に応じて判断することが大切です。
<ご注意>
モイストヒーリングは、すべての傷に適用できるわけではありません。感染が疑われる傷(膿が出ている、赤みが広がるなど)、深い切り傷、動物に噛まれた傷などは、必ず医療機関を受診してください。
モイストヒーリング対応のばんそうこうの仕組み
ひび割れやあかぎれには、ハンドクリームや軟膏をこまめに塗る方も多いと思います。ただ、塗った後は水仕事の妨げになったり、塗り直しが必要になったりと、家事の場面では不便を感じることもあります。
そこで、家事中でも活用しやすいのが「モイストヒーリング対応のばんそうこう」です。
ハイドロコロイド素材とは?

BAND-AID®の「キズパワーパッド™」に代表されるモイストヒーリング対応のばんそうこうには、「ハイドロコロイド素材」が使われています。
多くの場合、ハイドロコロイド素材は以下の2つの成分で構成されています。
(1)粘着剤(疎水性ポリマー):皮膚にぴったりくっつくための成分
(2)ハイドロコロイド粒子(親水性ポリマー):水分(浸出液)を吸収・保護する成分
このハイドロコロイド粒子が、傷口から出る体液(浸出液)を吸収してふくらみ、ゼリーのようなゲル状のクッションになります。これによって、浸出液を傷口に保持し続けるモイストヒーリングの環境がつくられます。
キズパワーパッドの二層構造
キズパワーパッドは二層構造になっています。
| 層 | 素材 | 役割 |
| 外側(表面) | ポリウレタンフィルム | 細菌・水の侵入を防ぐ |
| 内側(傷口側) | ハイドロコロイド素材 | 浸出液を吸収・保持する |
外側のポリウレタンフィルムは細菌や水の侵入を防ぐ効果があるため、食器洗いや水拭きなどの水仕事中でも使いやすいばんそうこうです。
使用上の注意点
(1)消毒剤やハンドクリームと一緒に使用しない(効果が損なわれる場合があります)。
(2)感染が疑われる傷(膿が出ている、赤みや腫れが広がっているなど)には使用しない。
(3)使用前に必ず取扱説明書をよく読む。
水仕事中でも使える?ハイドロコロイドばんそうこうの選び方
現在では、キズパワーパッドのほかにも、さまざまなメーカーからモイストヒーリング対応のばんそうこうが販売されています。
形状・サイズ・防水性の程度もさまざまなので、用途に合わせて選ぶのがポイントです。
家事中の使用を想定した選び方のポイント
(1)防水性を確認する

「完全防水」または「耐水」と表示されているものを選びましょう。水仕事の多い家事では、防水性の高いタイプが適しています。
(2)形状・サイズを傷の大きさに合わせる
ひび割れやあかぎれは指先や関節部に多く発生します。指専用・関節用など、形状に合ったタイプを選ぶと密着度が高まります。
(3)肌への負担を考慮する
肌が敏感な方は、肌に優しい素材・粘着剤を使用した製品を選んでください。
モイストヒーリング対応のばんそうこうは、一般的な救急ばんそうこうに比べるとやや価格は高めです。しかし、傷をきれいに治しやすいというメリットがあります。
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水仕事や掃除の回数が増えるほど、手は水や洗剤にさらされ、ひび割れやあかぎれの原因になります。毎日の家事をがんばるほど手荒れが悪化してしまう、そんなお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
特に、「換気扇の油汚れ」「浴室の水アカやカビ」「キッチンのこびりついた汚れ」などは、強い洗剤を使ったり、長時間こすったりする必要があり、手への負担が大きくなります。
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まとめ
水仕事や手洗いの増加に加え、空気の乾燥によって皮脂や角質層の水分が失われると、ひび割れやあかぎれが起きやすくなります。
こうした家事による手荒れに対して、「モイストヒーリング(湿潤療法)」は有効なアプローチのひとつです。水道水で洗い流したあとに出る浸出液をそのまま保持することで、痛みをやわらげながら傷を早くきれいに治すことができます。
ハイドロコロイド素材のばんそうこうは、浸出液を吸収してゲル状になり、傷口の湿潤環境を維持します。外側のポリウレタンフィルムが細菌や水の侵入を防ぐため、水仕事の多い家事に向いています。
家事で荒れた手に悩んでいる方は、ぜひ試してみてください。
<参考文献>
済生会「空気の乾燥で多発 冬の手荒れ」
https://www.saiseikai.or.jp/medical/column/teare/
池田模範堂「ひび・あかぎれ 原因・症状・治療法」
https://www.ikedamohando.co.jp/study/skin-trouble-info/cracking-and-chapping.html
巣鴨千石皮ふ科「傷・熱傷の治療に消毒薬は不要?『湿潤療法』は傷跡を残さず完治」
https://sugamo-sengoku-hifu.jp/column/moist-wound-healing.html
西川整形外科リハビリクリニック「湿潤療法・外科手術」
https://nishikawa-seikei.com/hojyun-geka/
日本衛生材料工業連合会「絆創膏モイストヒーリングのメリット」
https://www.jhpia.or.jp/product/bandage/bandage3.html
JNTLコンシューマーヘルス株式会社「モイストヒーリング(湿潤療法)」
https://www.band-aid.jp/kizupowerpad
JNTLコンシューマーヘルス株式会社「キズパワーパッド製品情報」
https://kenko-d.jp/pamphlet/medicines/91/261
Q&A|モイストヒーリングとひび割れ・あかぎれについて
Q. ひび割れやあかぎれはなぜ冬に多くなるのですか?
A. 冬は空気が乾燥し、水仕事や手洗いの回数も増えるため、皮膚の皮脂や角質層の水分が失われやすくなります。その結果、皮膚のバリア機能が低下し、ひび割れやあかぎれが起こりやすくなります。
Q. モイストヒーリング(湿潤療法)とは何ですか?
A. 傷口を乾かさず、湿った状態に保つことで自然治癒力を引き出す治療法です。傷を消毒せず、水で洗い流した後に出る浸出液を保持しながら治すのが特徴です。
Q. モイストヒーリングでは本当に消毒しなくてよいのですか?
A. 軽い切り傷や擦り傷の場合は、基本的に水道水でよく洗い流せば十分とされています。ただし、汚れがひどい傷や感染が疑われる場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。
Q. モイストヒーリングはどんな傷に向いていますか?
A. 浅い切り傷、擦り傷、軽度のやけど、ひび割れやあかぎれなどに適しています。深い傷や強い出血がある場合、動物に噛まれた傷などには適していません。
Q. ハイドロコロイド素材のばんそうこうとは何ですか?
A. 傷口から出る浸出液を吸収してゲル状になり、湿潤環境を保つ素材です。外側は防水フィルムで覆われているため、水仕事中でも使いやすいのが特徴です。
Q. 普通のガーゼとモイストヒーリングばんそうこうの違いは何ですか?
A. ガーゼは傷を乾燥させてかさぶたをつくる方法ですが、モイストヒーリングばんそうこうは傷を乾かさず、浸出液を保持して自然治癒を促します。そのため、痛みが少なく、傷跡が残りにくいとされています。
Q. モイストヒーリングのばんそうこうはどれくらいで交換すればよいですか?
A. 一般的には2〜3日に1回程度を目安に交換します。ただし、浸出液が多く漏れてきた場合や、端がはがれた場合は早めに交換してください。
Q. 水仕事をしてもはがれませんか?
A. 防水タイプの製品であれば、水仕事中でも使用できます。ただし、完全防水かどうかは製品によって異なるため、購入時に表示を確認することが大切です。
Q. モイストヒーリングを使うと傷跡は本当に残りにくいのですか?
A. 傷口を乾燥させず湿潤状態に保つことで、かさぶたをつくらずに皮膚の再生が進むため、傷跡が残りにくいとされています。ただし、傷の深さや体質によって個人差があります。
Q. ひび割れやあかぎれを予防するにはどうすればよいですか?
A. 水仕事の後はこまめに保湿し、就寝前にハンドクリームを塗る、必要に応じて手袋を使うなどが有効です。皮膚の乾燥を防ぐことが、ひび割れやあかぎれの予防につながります。















