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分煙・喫煙・禁煙?飲食店の「受動喫煙防止」対策をわかりやすく解説

2020.04.03

「改正健康増進法」が2020年4月1日から施行され、望まない受動喫煙を防止するために、すべての飲食店は原則として「屋内禁煙」となりました。これにより、居酒屋やカフェなど、飲食と一緒にたばこを楽しむような飲食店では客離れが懸念されています。

しかし、飲食店オーナーのみなさんご安心ください。「喫煙室」を設ければ、店内での喫煙を認めることができます。

とはいうものの、道のりはそんなに簡単ではありません。

事業規模が小さい飲食店では、喫煙室の設置コストが気になるでしょう。そもそも、狭い店内のどこに喫煙室を設ければいいの?という飲食店もあるはずです。たとえ資金や設置スペースに余裕がある飲食店でも、改正健康増進法による厳格な基準を満たす喫煙室を設けるのは容易なことではありません。

また、資本金や客席面積などの条件を満たしている飲食店は、喫煙室を設けなくても店内での喫煙が可能になるという「特別ルール」もあるなど、飲食店ごとに細かな検討が必要です。

そこで今回は、改正健康増進法によって飲食店オーナーが取り組むべき「受動喫煙防止対策」について分かりやすくご説明していきます。

改正健康増進法により、厳しい「受動喫煙防止対策」が求められます

受動喫煙とは、非喫煙者が望まないにもかかわらず「喫煙者のたばこの煙」を吸ってしまうこと。受動喫煙による健康被害は、長らく問題となっていました。

改正健康増進法では、このような「望まない受動喫煙」による健康被害を防ぐため、飲食店を含む施設での屋内喫煙が原則として禁止されます。したがって、飲食店が取り組むべき対策は「店内完全禁煙」ということになります。

店内完全禁煙の例外とは?

一方で、改正健康増進法では、「2020年4月1日以降も、国で定めた分煙対策をおこなうことで、店内での喫煙が可能になる」という例外措置も設けられています。

ただ、今後求められる「分煙対策」は、従来のような「ランチタイムは禁煙でディナータイムは喫煙可(時間帯分煙)」や「個室や座敷ごとに禁煙エリアと喫煙エリアを分ける(空間分煙)」などのゆるい分煙対策はNG。国が定める厳格な基準を満たした喫煙室を設けて、分煙をする必要があります。


※屋外であれば、喫煙場所を設置できます。

しかし、これにも例外(経過措置)があり、あなたの飲食店が「既存特定飲食提供施設」に該当すれば、喫煙室を設けなくても店内での喫煙を認めることができます。

喫煙室がなくても、店内で喫煙できる飲食店の条件とは?

今回の改正健康増進法では、原則として屋内禁煙になる施設を「第一種施設」と「第ニ種施設」に分類しています。

第一種施設 第ニ種施設
小中高等学校や保育園などの教育施設、医療機関や行政機関など 飲食店、ホテル、運動施設など
敷地内は完全に禁煙。※屋外であれば、喫煙場所を設置できます 原則として屋内禁煙だが、国が定めた基準をクリアした喫煙室を設けることで屋内での喫煙が可能

これが基本的なルールですが、上述のとおり、あなたの飲食店が「既存特定飲食提供施設」に該当すれば、経過措置として、喫煙室を設けなくても店内での喫煙を認めることができます。

「既存特定飲食提供施設」は、以下の3つの条件をすべて満たしている必要があります。

(1)2020年4月1日時点で営業している
(2)資本金が5,000万円以下である
(3)客席面積が100m2以下である

これらの条件からは、「規模の小さな飲食店にとっては、喫煙室を設ける費用やスペースが経営を圧迫しかねない」という配慮が伺えます。

このように、店内でたばこが吸え、店内全体が喫煙室として認められる空間を「喫煙可能室」と言います。お酒と一緒にたばこを楽しんでもらう小規模な居酒屋などは、3つの条件を満たしていれば、喫煙室を設けることなく、喫煙可能室として今までどおり営業することができます。

喫煙可能室の注意点

喫煙可能室でも、店内を「全面喫煙可」にするのではなく、店内の一部でのみ喫煙を認める「分煙」にすることができます。しかし、分煙にする場合は受動喫煙防止の基準を満たした喫煙室を設ける必要があります。従来のように、禁煙エリアと喫煙エリアをパーテーションで分けるだけの「空間分煙」は認められません。

なお、店内の全体を喫煙可能室にする場合、店舗そのものを20歳未満入店禁止にしなくてはならず、20歳未満の従業員も立入禁止になります。同様に、店内の一部を喫煙可能室にする場合も、20歳未満のお客様や従業員は喫煙エリアに立ち入ることはできません。

既存特定飲食提供施設の経過措置は2025年度を目安に見直しを図ると言われていますが、現在、見直しの内容は明らかになっていません。また、東京都などの自治体条例では、既存特定飲食提供施設と認められるためには、もう一つ満たすべき条件があります。詳しくは「東京都や大阪府の飲食店、受動喫煙防止条例は国より厳しい!? 改正健康増進法との違いとは?」をお読みください。

屋内に設ける喫煙室は「喫煙専用室」など4タイプ

出典:厚生労働省ホームページ

既存特定飲食提供施設以外の飲食店や、その他の第二種施設(事務所やホテルなど)では、受動喫煙防止の基準をクリアした喫煙室を設けることで屋内での喫煙を認めることができます。

ここで言う「喫煙室」とは、「喫煙専用室」もしくは「加熱式たばこ専用喫煙室」と呼ばれるものです。

喫煙専用室 加熱式たばこ専用喫煙室
紙巻たばこ・加熱式たばこの喫煙は可能だが、飲食の提供ができない喫煙室のこと 加熱式たばこのみ喫煙が可能で、飲食の提供も可能な喫煙室のこと

「お客様にはお酒やコーヒーと一緒にたばこを楽しんでほしい」という飲食店は、喫煙室内で飲食の提供が可能な「加熱式たばこ専用喫煙室」を設けることになります。これまでよく見られたように、紙巻たばこを吸いながらお酒やコーヒー、食事を楽しんでいただくことはできなくなります。

なお、喫煙室のタイプは、ここまでご紹介してきた「喫煙専用室」「加熱式たばこ専用喫煙室」「喫煙可能室」の他にも、シガーバーのように喫煙をサービスの目的とする「喫煙目的室」というものがあり、喫煙室のタイプは全部で4種類になります。

屋内喫煙を可能にする喫煙室の基準とは

それでは実際に、喫煙室を設ける際の基準をご説明しましょう。「喫煙専用室」「加熱式たばこ専用喫煙室」を設ける場合、また、店内の一部を「喫煙目的室」とする場合は、以下の基準をすべてクリアしなければなりません。

(1)(喫煙室と禁煙エリアとの)出入口において、室外(禁煙エリア)から喫煙室内への空気が「0.2m/秒以上」の風速で流入するようにする。
(2)たばこの煙が室内から室外(禁煙エリア)に漏れ出ないよう、壁・天井などによって区画する。
(3)たばこの煙を屋外または外部に排気する(屋外排気)。

いずれの基準も、喫煙室からたばこの煙が漏れ出ることによる受動喫煙防止を目的としています。

(1)は、たばこの煙が喫煙室の外に漏れないように、明確に「風速」が定められています。この風速は、(3)の「たばこの煙を屋外に排気する」際に必要になる換気扇の能力によるところが大きくなります。(2)は、壁や天井によって独立した喫煙室を設けることを求めています。従来のように、「パーテーションで簡単に間仕切りしたスペースに空気清浄機を置いておけばOK」というわけにはいきません。

テナント店などは、喫煙室の設置ハードルがさらに高い!?

さて、あらためて喫煙室に求められる3つの基準を見てみると、「(3)たばこの煙を屋外に排気する(屋外排気)」がもっともハードルが高く、飲食店オーナーの頭を悩ませることになると思われます。

たばこの煙を屋外に排気するためには、主に2つの方法があります。

・屋外に接している壁に穴を空ける工事をして、「換気扇」を設置して屋外排気をする。
・換気扇による屋外排気ができない場合、屋外に続く「排気ダクト」を通す工事をして屋外排気をする。

基本的には、店舗の環境や予算に応じて、どちらかの方法を選択することになりますが、テナント店の場合は、ビルオーナーから工事の許可が得られるとは限りません。また、仮に許可されたとしても、多額の工事費がかかる場合もあります。

屋外排気ができないなら「屋内排気が認められる脱煙装置」で解決

さて、あらためて飲食店における「受動喫煙防止対策」について整理してみます。飲食店の選択肢は、以下の3つのいずれかになります。

(1)分煙:喫煙室を用意して、店内の一部で喫煙できるようにする
(2)全面喫煙:店内全面で喫煙を認める(既存特定飲食提供施設に限る)
(3)全面禁煙:店内を全面禁煙にする
※上記のほか、シガーバーのような喫煙をサービスの目的とする「喫煙目的室」として営業する選択肢もありますが、一般的ではないため省略しています。

このなかでもっとも悩ましいのが、「(1)分煙:喫煙室を用意して、店内の一部で喫煙できるようにする」ではないでしょうか。費用やスペースに加え、屋外にたばこの煙を排気させなければならない「屋外排気問題」が重くのしかかってくるからです。

屋外排気が難しい飲食店は、経過措置として屋内排気も可能

この「屋外排気問題」を解決する切り札として「脱煙装置」が注目されるようになりました。

脱煙装置とは、たばこの煙を浄化する装置のことで、この装置を通過したたばこの煙は屋内(店内)への排気が認められます。ただし、脱煙装置は以下の技術的基準を満たしている必要があります。

(1)総揮発性有機化合物(TVOC)の除去率95%以上であること
(2)浄化により室外に排気される空気における浮遊粉じんの量が0.015mg/m3以下であること

喫煙室用ワンパス脱臭装置OP100(提供:株式会社J.G.コーポレーション)

さらに、受動喫煙を防止するために、壁や天井でしっかりと仕切られた空間(喫煙ブースなど)を用意し、通常の喫煙室と同じく「(喫煙室と禁煙エリアとの)出入口において、室外(禁煙エリア)から喫煙室内への空気が0.2m/秒以上の風速で流入するようにする」ことも求められます。

喫煙ブースは、壁や天井で仕切って用意したり、元々ある部屋を利用したりすることもできますが、脱煙装置と喫煙ブースをセットで提供しているメーカーも多くあります。

喫煙ブースは簡単につくれます(提供:株式会社J.G.コーポレーション)

飲食店の分煙対策は、立地環境や予算などに合わせた対策を講じることが大切です(分煙コンサルティングを利用する)

飲食店の分煙対策として、換気扇からたばこの煙を屋外に排出するケースは少なくありませんが、その場合は近隣の店舗や住民への配慮が必要です。実際に、屋外に排出されたたばこの煙が隣の学習塾に届いてしまったためにトラブルが発生した事例もあります。このような事例を踏まえても、飲食店の分煙対策は、立地環境や予算などに合わせてお店ごとに最適な「オーダーメイドの対策」を講じることが重要です。

「壁に換気扇を設けたほうがコストの負担が少ないのか?」
「排気ダクトを設けたいけど、構造的に難しいかもしれない・・・」
「工事の許可がおりない場合はどうすればいい?」

このように分煙対策でお困りなら「分煙コンサルティング」のご利用をおすすめします。立地環境や予算だけでなく、お店が抱えている様々な事情を考慮してオーダーメイドの分煙環境をご提案するのが分煙コンサルティングです。

清掃・環境衛生管理の「株式会社サニクリーン」と、空気清浄機などの空調トップブランド「株式会社J.G.コーポレーション」は、共同で分煙コンサルティングをご提供しております。飲食店をはじめオフィスやホテルなど幅広い実績がございますので、まずはお気軽に無料相談をご利用ください。

<関連記事(サイト)>
飲食店の分煙対策「経営的なメリットとデメリット」
「東京都や大阪府の飲食店、受動喫煙防止条例は国より厳しい!? 改正健康増進法との違いとは?」

<参考文献>
受動喫煙対策(厚生労働省)

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